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何も起こらない日々の日記


by nekomama44
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「風と共に去りぬ」 クラーク・ゲーブル

今、「風と共に去りぬ」が終わった。何十回と見ているのだが、いつ見ても見飽きない映画だ。太平洋戦争中、アメリカでこの映画を見た日本人が、こんな映画を作る国に勝てるはずがないと悟ったという逸話があるが、まったくたいした映画だ。またマーガレット・ミッチェルの原作も面白い。彼女はこれ一作を残して若くして亡くなっているが、自分の全てを書き尽くしたといった感じだ。彼女には愛した人が二人いた。そのうちの一人はレッド・バトラーのモデルになったといわれている人物だが(確かレッドといったような)が、彼もバトラーに近い豪快な遊び人で、二人の仲は物語と同様に破綻し、その後マーガレットは物静かな男(いわばアシュレーのような紳士)と結婚した。レッドはアルコールに溺れたか何かで平凡に人生を終わらせることなく若くして亡くなってしまい、マーガレットはその人生経験をこの作品の中に入れたようだ。10年ほど前「スカーレット」という続編を現代のアメリカ人が書いたが、これは紆余曲折があるが最後はスカーレットとレッドは出会い今度こそ幸せに暮らすというものだ。が、これは本当に蛇足だろう。ただ、レッド(クラーク・ゲーブル)には幸せになって欲しいというファン心理が蛇足とわかっていても書かねばいられなかったのだろう。(ただし続編はメロドラマになってしまっている。)

ハリウッドのキングと呼ばれたクラーク・ゲーブルは私生活では若い時の結婚は2度とも10才以上の年上妻だった。その後女優のキャロル・ロンバードと再婚し、二人はおしどり夫婦で有名だったが愛妻は飛行機事故で死亡。そのためゲーブルは映画を引退し空軍に入隊、戦場へ。戦後カムバックしキャロル・ロンバードに似ていると言われる女優と結婚するが数年で離婚。その後元女優と再婚した。ゲーブルにはそれまで子どもはいなかったが、この最後の結婚で生まれたのが一人息子ジョン・クラーク・ゲイブル。しかし彼が生まれたのはゲーブルの死後4ヶ月だった。マリリン・モンローが憧れていたのがゲーブル。二人は「荒馬と女」で共演した。しかし奇しくもこの作品が二人にとって遺作となってしまった。

昔、子どもの自分、はじめてこの映画を親と一緒に見た。映画が終わったとき、父親に何が風と共に去ってしまったのか聞かれたので、レッド・バトラーだと答えた。父親は、それだけじゃないな。男も、そして南部の一つの時代も去ってしまったんだ、と言った。子供心に妙に感心したことをこの映画を見るたびに思い出す。自分も年を取り、自分の周囲から人も、時間も、時代も、やはりどんどん去っていってしまう。幼い頃思っていた夢や希望も、現実にはどんどん過ぎ去って消えて、言い換えればそういったもの自体が変化していく。立ち向かうなんてそんな青いことを考えることも既にない。ただ懐かしい思い出だけが残っていくのが寂しいものだ。

以前は南北戦争がメインでメリハリのある前半に比べて後半が間延びしているように思えたが、だんだんと後半のレッドとスカーレットの心のすれ違いが胸に痛くなってきた。どうしてもっと素直になれないのかと昔は思ったが、男と女ってあんなもの。アシュレーのビックリ誕生日パーティーの晩、酒に酔ったレッドがスカーレットを半分レイプするが、これは夫婦間の強姦が途中で和姦になったわけで、翌朝スカーレットは非常にご機嫌良く歌なんか歌ったりしている。が、自分が紳士的でなかったことを恥じてわざと慇懃無礼に振る舞うレッドの態度に、スカーレットはレッドを拒絶するふりをする。このあたり、映画ではそのものは描かず、「甘く見るな」と言ってレッドがスカーレットを抱いて階段を登っていき暗転、翌朝のシーンへと移行するだけで色々と見せない。しかしあの嬉しそうにベッドで伸びをするスカーレットの顔が全てを語っており、このシーンはまさに大人の事情を見せ付けている。前半のような派手さはないが、後半はこういった部分が好きだ。
by nekomama44 | 2005-02-09 01:04 | 映画