初恋のきた道 チャン・イーモウ監督
2005年 03月 19日
話の冒頭で先生が死に、その息子が村へ戻ってくる。この息子の両親の若い日の出会いを回想していく趣向。先生は、その刈り上げた髪型のせいか、とっちゃん坊やなのが気になるが、少女役のお下げ髪のチャン・ツィイー(Chang Zi Yi)の愛らしいことといったらない。だからか、回想シーンは彼女のアップばかりだ。彼女の歯茎をもう少し出せば、日本の「北の国から」の中島朋子に似ている。
だが、ぐっときたのは、最後に先生の棺を町から村まで雪の中、担ぐ人を当初は雇うつもりだったが、実際に先生の教え子が100人も遠くからも集まってくれたというエピソードや、また教師になって欲しがっていた両親の思いを組み、村を離れる前に息子が一日だけ再建されることになっている父親の教えていた学校で、父が赴任最初の日に朗読した父親が作った文章を、息子が子ども達に朗読したところ。この二つのエピソードがあるので、両親の二人の出会いや、冒頭の棺をかつがなければいけないという母のこだわりがまた生きてきた。
「初恋の来た道」という邦題は、甘酸っぱい懐かしい思いを起こさせる良い題だが、どうしても少女の初恋が中心というイメージがある。しかし映画の中国の原題が「我的父親母親」とあるように、父と母への思いとまた両親の思いをかみ締める子ども、といった家族を感じさせる映画だった。余談だがアメリカでの題は題“The Road Home”で、これは「カントリー・ロード」を思わせる、どちらかというと「ホーム・スイート・ホーム」的なイメージで、中国での主題に近い。
ところでチャン・ツィイーは、この後「グリーン・デスティニー」のヒロインの一人にも抜擢され、この映画は全米でも大ヒットしたため、アメリカでも現在人気がある。「初恋のきた道」の時は、役の年齢が18歳、撮影当時の年齢が19歳とほぼ同じで初々しかったが、「グリーン・デスティニー」では少し貧相になってしまっていたし、宣伝の来日の際は、チーママ風味だったので驚いた。